++裏側のカーテン++

 

 
「春だなあ…」
「……」
誰にともなく瞬は呟いた。聞く人間は一人だけだが、当の本人に聞く気がないことはよく知っている。無論春と何の関係もなくただ偶然この季節、この晴天の日に戻ってきただけの兄に、そんな情緒を求めるだけ無駄というものだ。
窓を開け放ち舞い落ちる花粉をものともせずにぼんやりと外を眺め、瞬は中庭の星矢に手を振った。
「しゅーん!遊びにいこうぜーっ!」
「うーん、春だなあ。どうします、兄さん」
「……」
兄は答えない。しかしその程度でへこたれるような弟ではなかった。
「兄さーん?聞こえてるよね?」
「…俺はここにはいない」
「じゃどこにいるっての」
「……ギアナ高地」
「その程度で秘境だなんて思って無いですよね?」
「……。」
一輝が黙りこくってしまったのは、けして反論できなかったのではなく、眠気が限界に達したせいだった。
「しゅんー!?」
「ごめんね、星矢!僕は留守番してるよ」
「沙織さんに気ィつけろよーー!!!」
直後、星矢は紫龍に殴られていた。瞬は一通り騒ぎを見守った後、窓を閉めカーテンを引くと今更のように首をかしげた。
「……どういう意味だろうね?」
「さあな」
一輝は億劫気に前髪をかきあげ、上半身を起こした。あつい、と言ってシャツを脱ぎ、そのまままた横になってしまった兄を、瞬は微妙に咎めるような目で見つめる。その視線をさえぎるようにシャツを弟に放り投げた一輝は、目を眇めて不適に笑った。
「なんだその目は」
「僕のベッドだよ」
「お前も寝るか?」
「暑苦しい…」
我が物顔で半裸の兄にベッドを占領されたうえに洗濯物まで押し付けられた瞬は不満顔だ。
「自分の部屋があるくせに」
「お前、俺がいないと寂しいんだろう?」
「……な、」
瞬はぱっと頬を染めて、兄を睨みつけた。図星なだけにばつがわるい。
「…わかりました。じゃあ僕が兄さんの部屋にいきます!」
「つれないな」
「うわ!?」
何を馬鹿なことを、と眉をひそめた瞬の雑言は、急に浮いた身体に驚いた小さな悲鳴に変わられた。落ちたシャツがふわりと床に広がる。腕一本で軽々と弟の細腰を抱き膝に乗せた一輝は、その白いうなじに舌を這わせながら囁いた。
「お前も少しは遊べ」
「や…っ兄さん!?」
生暖かく湿った感触に身を震わせて肩越しに兄を振り返り、瞬は己の失敗を悟った。
一輝は抑える腕を平然とかいくぐって、薄手のTシャツの下に手を忍ばせ、まだ柔らかい乳首を悪戯に弄る。巧みな愛撫につんと尖ったそれに爪を立てられ、ジーンズ越しに自身をやわやわと揉まれ、瞬は甘く吐息で兄を責めながら悶えた。
「…あっ、にぃ…さんの馬鹿っ」
面白がるような、それでいて愛しげな目に気づいてしまえば、逆らえるわけもないのだ。

 

*戻*

 


(050323)

 

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